パラサイト 半地下の家族

映画パラサイトネタバレなし

今作のあらすじ
キム一家は家族全員が失業中で、その日暮らしの貧しい生活を送っていた。そんなある日、長男ギウがIT企業のCEOであるパク氏の豪邸へ家庭教師の面接を受けに行くことに。そして妹ギジョンも、兄に続いて豪邸に足を踏み入れる。正反対の2つの家族の出会いは、想像を超える悲喜劇へと猛スピードで加速していく……。
>>https://eiga.com/movie/91131/より
総合評価:75点 / 100点

物語:☆☆☆
映像:☆☆☆☆
配役:☆☆
感動:☆
笑い:☆☆☆☆

見てきました、アカデミー賞3部門を総ナメにした韓国映画パラサイト。さっそく、ネタバレのないレビューをしたいと思います。これから映画に行こうかどうか考えていらっしゃる方の参考になれば。



1.前半と後半で構成が違う

前半はドラマチックコメディ、韓国ドラマお得意のどろどろお家騒動を前面に押し出しつつ、それを冷静に俯瞰したような乾いたコメディを内包させている。
キム家の長男がお抱えの家庭教師になってから間髪入れず、すでに雇われている運転手やお手伝いさんを次々と富豪パク家から切り離し、代わりに自らの家族を送り込む。大仰な音楽とカット割りが相まって何度も笑える 。

そういう意味では前半は恵まれない者たちの成り上がり譚としてかなり面白い。あの手この手の工作にワクワクが止まらない。
劇中、富豪である家族は高い位置に住み、高い位置に寝る。対して貧困している主人公家族は低い位置に住み、低い位置に寝る。このような高低の構図が彼らの身分さを上手に暗示している。

表こころブログ_パラサイト

この奥さんの「オモッ」を合図に、物語はどんどん面白くなる。



2.しかし後半からやや失速

ドラマチックコメディから一転、後半はサスペンスに。
かつてアカデミー賞受賞前に、この作品の感想を聞かれた松本人志は「前半は面白かった」と言っていた。

表こころブログ_ダウンタウン松本人志

私もそれを覚悟で見たが、なるほど、後半は通り一遍等のサスペンスとなってしまった。しかも、これはあくまで韓国映画。ハリウッド映画のおさだまりを沿ってないサスペンスだからイマイチ腑に落ちない。ネットのコメントでは伏線は全部回収したというが、果たしてどうか。息子のモールス信号解読どうなった?不動産目録や収入証明書は?

しかしこの映画がアカデミー賞を受賞するには後半のサスペンスが不可欠だったのだろうと思う。前半の簒奪劇だけでもずいぶんと見ごたえがあったのだけど、社会性映画を大切にするアカデミー賞には後半のサスペンスがいかんせん必要だったのだろう。
あとこれ前半と後半で主人公変わってるよね?そこも軸がぶれている感じがしている。後半をもっとテンポよくしたらよかったのに。映画を見終わった後もモヤモヤが続くものだった。





3.ダブルミーニングとなった「パラサイト」

まぁ、正直松本人志のコメントで、オチはだいたい読めた。
とにかくパラサイト(寄生するもの)という映画なのだ、これは。これだけでもどういう意味か勘がいい読者なら分かると思う。それと「半地下の家族」という名前もいいね。「地下」じゃないんだよ。

作中でてくる「やっぱり信頼できる人の紹介でないと」と縁故採用の愚に気づこうとともしないお人好しのマダム。まさに広島の縁故採用団体Gの管理職・三好に聞かせてやりたい。この対極にあるのが作中、唯一実力でその職を得た妹。その妹も結局はコネを入り口としていた。実力があって頭がよくて、それでもコネなしでは就職はできない。この妹の顛末は胸に刺さりますね。

もうひとつ書き忘れてはいけないこと。
この映画では複数の家族が入り乱れるが、これぞまさに儒教王国の韓国ならではの光景だろう。
もしこれがアメリカ映画なら、お兄ちゃんの同級生の金髪娘か、ハッキング能力のあるちょいワルなイケメンティーンが登場して、家族というものにフォーカスが当てられなかった可能性がある。中国もそうだけど、アジアの一部では一族至上主義で、親戚総動員した人海戦術がお家芸なのだ。まさに家族にパラサイトする家族。ここがアカデミー賞評価の所以か。
貧富の格差だけでなくて、こちらの部分も注目してほしい。

総評は75点。
興味があるならみて損はないレベル。



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