その日は夜遅めに
電車に乗り帰路についた。
運良く、席を見つけたので
座ると、微妙に私の隣が空いていた。

座るにしては狭いし、
空けるにしては広いし。

しばらくたって
一人のおばさんが乗ってきた。

ぽっちゃりでメガネのおばさんだった。

表こころブログ_電車のうーんうーんおばさん1

そしてツカツカと
歩み寄り私の隣にすとーんと座る。

私は一瞬で悟った
「持っている人だ」

電車内は、飲み屋帰りの
酔っ払いや仲間連れが多くて
わいわいと賑やかだった。

おばさんは私の隣で
なにやら言っていた。

「うーんうーん」
唸っている。

セミか?
いやスマホのバイブかもしれない。

「うーんうーん」
とかく私の前にいた
サラリーマン2人の声が大きく、
会話で盛り上がっていた。

表こころブログ_電車のうーんうーんおばさん2

「うーんうーん」
おばさんは唸りながら
パッと顔を上げて、
リーマン2人に言った。

「あの、喋るんだったら
 声下げてもらっていいですか!?」


表こころブログ_電車のうーんうーんおばさん3j

一瞬で静まり返る車内。
黙ったのはリーマンだけでない。

車内全員が閉じた貝のように
黙りこくった。

表こころブログ_電車のうーんうーんおばさん4j


よかったー。私1人で。
よかったー。私誰かと喋ってなくて。

おそらく、このうーんうーんオバさん。
音が気になる人なのね。
過敏な人なのね。


声が静かになった車内で、
今度は窓からの風の音がうるさくなった。

おばさんはすくっと立ち上がり
窓をガッシャンと閉める。

表こころブログ_電車のうーんうーんおばさん5j

その閉めた音の
うるさいことうるさいこと。

車内中の視線がおばさんに降り注ぐ。
「スイマセン!」
高校球児のような綺麗な
お辞儀をして謝っていた。


もし私が、笑いの道に生きて
お金を稼ぐ人間だったら

表こころブログ_電車のうーんうーんおばさん6

なんて言ってオチをつけたのに。

まだまだ修行が足りない。
林家一門なら、即日、破門である。

おばさんは気まずくなったのか
ずいぶん早めに電車を降りて行った。



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