広島はのんびりしておる。

渋谷で令和の幕開けを
ビールかけながら祝っている間、
広島随一の市街地は閑散としておった。


そんなのんびりの
広島の電車の中での
ある日の一コマ。

その人は終点の駅にも関わらず
降りずに座席に座っていた。

表こころブログ_キセルもたれかからないでよおばさん1j

『キセルだ・・・』

ふつう、終点でも降りずに
折り返したまま始発に乗っていると
キセルにあたる。

腑に落ちないまま電車へ入り、
おばさんの前に座った。




夕方だったから
車内は帰りの会社員たちで
ごった返しだ。

そこへマスクおばさんの隣に
サラリーマンのおじさんが座ってきた。

表こころブログ_キセルもたれかからないでよおばさん2j

よっぽどお仕事で疲れたのだろうか。
ウトウトと舟をこぎだした。

おばさんの肩に顔が当たる。
その瞬間おばさんが

表こころブログ_キセルもたれかからないでよおばさん3j

「ちょっと!」

ザ・たっちの「ちょっと(*3)」の
ボリュームがハンドガンだとしたら
おのおばさんの「ちょっと」は
ロケットランチャーだった。

表こころブログ_ざたっちj


私はいつしか、
おばさんに夢中になっていた。

スマホ打ち込むふりして
吟味。

表こころ_こころ流奥義


おじさんはよっぽど
疲れていたのだろう。
またもやおばさんの
肩にもたれかかる。

表こころブログ_キセルもたれかからないでよおばさん5j

今度は社内に響く声だった。

なんという気性の荒さ。
言うたらおばさんもキセルやけど、
なんという根性だろう。

どんな地上げ屋にも屈しない
老舗旅館の女将さんのような気概だ。
「私は大正時代から
ここにいますけど?」

と言わんばかりだ。


たまらず、そのリーマンさん
ほかの席が空いた瞬間そこをどいて
おばさんのもとから退散した。

その時だった。

表こころブログ_キセルもたれかからないでよおばさん4j

空いた席をことの一部始終を見ていた
若い女性がすっと座ったのだった。


驚いた。

感情-気づきj

もし、私がおせっかジジイだったら
「あ、あんたぁ、
い、いまの一部始終
見とったじゃろぉ?」

と尋ねんばかりである。


大正時代のキセル女将以上に
図太い人がいたとは。
そしてこんな華奢なお嬢様とは。

『この人、つよい!』

たぶん、北斗の拳の世界になっても
最後まで生き残るよ。

案の定、おばさんの叫び声を
もう二度と聞くことなく、
私は自分の駅で降りたのである。

彼女らの行方は誰も知らない。



問題:「図太い」という言葉を本文中では違う言い方で表している熟語が文中に二つある。それを抜き出しなさい。



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