あれは高校生だったころ。
飲食店でバイトをしていた。


学校の制度的には実はグレー
だから職場で出会う年上の女性たちは
ふだんの会話で聞けない
世の中の一部分を見せてくれるような
そういった背伸びした快感があった。

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ちょうどそのとき、
世間ではリーマンショックで不況のさなかだった。

バイトをして発見したことがある。
その飲食店に勤めて長い人と
仲良くなっても、お店の外までの
おしゃべりをする機会はあまりない。

逆に入ったばかりの新人。
つまり年上の後輩は、
割と簡単に仲良くなれた。

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また、いつの時代も
職場の女性の人間関係を深める方法がある。
それは上司の愚痴だろう。

女社会はそうやって
回転していく。

よく仕事終わりにバイト仲間を誘ってファミレスに行っていた。
私もよく仕事の不満を語りあっていた。


そのなかの一人の女性。
エンドウさん。

彼女はなんというか
暗い雰囲気が漂っていた。

しかし、そこは現在占い師の私
『この人、冗談好きそうだな』
ということを感じたため、
アプローチして何回かごはんに行った。


たしかにエンドウさんは根が面白い人だった。
しかし、なぜにこうも暗い印象がまとまりついてるのか。

実はこの時、彼女はリストラされて、
この飲食店以外にも、
保険の会社で働いているらしかった。

話を聞けば聞くほど暗い状況。



「えー保険の会社だけじゃないんですか?」

「そうなの15万円の給料でしょ。そこに移動費を引いて10万円」

「移動費?」

「ほら保険会社だから自分で移動しなくちゃいけなくて。そこから家賃が7万円」

「なるほど」

「だから私三万円で生活しないといけなくて

「…」

「明日からもどうしようかって思って」

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これ、すっごいショックだった。

大人になった今だから分かるけど、
大人が自分の給与を詳細に語る
のは、なかなかないよね。

エンドウさんにとっては
そんな体裁とか、プライドとか
そういうのはもはやどうでもいいぐらい
カツカツの問題だったんだろうと思う。

今なら分かる。


私はふと、テーブルのコーヒーを見た。

一杯320円。

やろうと思えば10秒で平らげられるこの飲みものは
彼女の生活資金の1/100になっていると考えると悲しい。


「で、でも、ほらバブルの頃は楽しかったんじゃないですか?」
(高校生の私なりの精いっぱいのフォロー)

「確かに、今考えたらタクシーとかよく乗せてもらっていたし。
あれがバブルだったのかなぁって」


バブル儚い

なんと儚い。

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もはやエンドウさんを
フォローすることをあきらめ、
いつものように職場の人間関係についておしゃべり。


「○○さんってクールに見えて優しい人なんですよ」
と私が問いかける。

「あ、それ思った。
今日落し物持ってきてくれたから、
嫌いリストからチェック外しといた♪」



私ぜんぜん年下だけど、
この時、心底思ったね。

『それどころじゃないよ!あなた!』

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それから私はいろんなバイトを経験した。
大学にも行ったし、
占い師にもなって
もっといろんな人の
いろんな話を聞いてきた。

きっといま、エンドウさんと街ですれ違っても、
もう気づかないだろう。



それでも、私が資格のある進路に決めたのは
やっぱりこのエンドウさんの話が根底にあるからだろう。

人の人生を決めるきっかけというのは
実は以外なところにあるもので。




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